基本用語解説PC版
はじめに
『ハードゲイは和製英語?』
 
 このサイトに訪れた方々は「ハードゲイ」という言葉を、お笑いタレントなどの活躍を通じて知ったり、思い出したりして懐かしく思ったり、耳なれないと感じた方も多いかもしれない。実は「ハードゲイ」という呼び名は今や日本独特のものになっている。
 一説には、この言葉は現代日本のホラー映画につながる、先駆けでもある映画『エクソシスト』で有名なW・フリードキン監督による、アメリカのゲイの間で起こる連続殺人事件を、ゲイに扮した刑事がおとり捜査で解決していく映画『クルージング』を日本で宣伝するさいに、日本の映画配給会社によって宣伝のために付けられたものだという。
 これは余談だがW・フリードキン監督のこだわりはハードゲイの持つ色のイメージ「ブラック(黒)」の方にあったにちがいない。『エクソシスト』で、悪魔に取り憑かれた少女を助けるため、自ら悪魔に取り憑かれ、命を落とすヒーローに黒衣の神父を選んだことと無縁ではないはずだ。『エクソシスト』では少女が悪魔に取り憑かれて母の友人を殺してしまうのだが、『クルージング』の殺人犯も、ゲイである自分を認めずに世を去った父の亡霊(愛されなかった記憶)に取り憑かれている。そして、おとり捜査でゲイに扮するアル・パチーノ演じる刑事は、ブラックゲイたちの世界に接するうちに、自らもゲイであることに目覚める暗示で終わっている。
 さて、この映画は日本公開と共に、当時テレビなどでも大変、話題となり、記憶が正しければ、ある番組のこの映画に関連したアメリカ現地レポートでは、男臭い「ハードゲイ」に対して女装などを好むゲイを「ソフトゲイ」という(?)名称で紹介していたことを思い出す。
 2009年4月2日まで日本版「ウイキペディア」のハードゲイ(曖昧さ回避)」項目の説明では「米国人の男性同性愛者らのムーブメントである「アメリカン・ハードゲイ」」となってたし、さらには「アメリカン・ハードゲイ」が正式名称だとする辞書もあるらしい。
 様々なゲイ・プライド・ムーブメントが起こった1980年代に「Hardcore=ハードコア」なゲイという意味で「Hard Gay」という言葉が使われたのでは? という可能性もあるが「Hardcore=ハードコア」は女装なども含むポルノ用語なので、男性性にこだわる英語圏のゲイたちがこの言葉を選ぶことは考えにくい。英語圏の友人によると、「むしろHeavy=ヘビーの方がイメージに合っているのでは?」とのことだった。
 実際「アメリカン・ハードゲイ=American hard gay」という名称をインターネットで検索すると、欧米のサイトやページでさえ、引っかかる記事の内容は例の日本のお笑いタレントのものがほとんどで、全くではないのかもしれないが、当の「アメリカン・ハードゲイ」の間ではすでに意味を失っている様子である。(笑)
 それは同時にアメリカのゲイたちが自分たちを「Hard Gay」と称したり、あるいは呼んだりしたという正式な記録が、ほぼ全く見当たらない現実を示している。今日、アメリカのゲイの間で「Hard」という言葉は単に「硬い、疲れる、一所懸命」以外の意味では「me harded=ボク硬くなっちゃった」というように性的に興奮して勃起したことを幼児語的に表現するさいによく使われているようだ。
 しかも「アメリカン・ハードゲイ=American hard gay」をエキサイトの翻訳ソフトにかけると「アメリカ人は一所懸命同性愛者です」となってしまう始末。
 もっとも「アメリカン・ハードゲイ」が正式名称だとする辞書の著者は、信頼のおける文献を手元に持っているのかもしれないが、そうした文献や資料について示されていないかぎりは検証のしようが無いとう状態なのだ。
 では、現在アメリカで通用する日本の「ハードゲイ」にあたる最もポピュラーな名称や呼称は何か? さらにインターネットで調べて見ると「ゲイ・レザーマン(Gay leather men)」「ビーディーエスエム・ゲイ=BDSM Gay」などがポピュラーなようである。以下の説明とリンク先を参照して欲しい。
 この「ハードゲイ」というカテゴリーと言葉は日本では、ゲイであるか否かを問わず通用するにもかかわらず、あまりゲイの中で一般化しなかった理由は、そのスタイルを体現する、あるいはできる人物が少なく、(様にならないという意味も含めて)ましてや集団になったりすることもなかったし、ドラァグクイーンのような「パーティの華」にはなりにくい側面もあったからかもしれない。
 いずれにせよ自分のセックスのスタイルをファッションによって外に向けて明確に発信することを好まない日本人なのだが、「バリタチ」「バリネコ」「リバ」などといった日本ならではのカテゴライズや名称に、日本にしかない「ハードゲイ」があってもよいだろうと思うのである。

■参考サイトリンク■
 「ハードゲイ=ゲイ・レザーマン、ビーディーエスエム・ゲイ」のアメリカでの認識とおおよその説明は英語版「ウイキペディア」の「Leather subculture=レザー・サブカルチャー」のページで参照できる。
 アメリカの「ハードゲイ」であるゲイ・レザーマンやビーディーエスエム・ゲイのためのサイトリンクを集めた「LeatherClub.net」でもやはり「Hard Gay」の名称は見当たらない。
 また、黒革のいでたちをドレスコードにして1980年に始められた、ゲイ・レザーマン、ビーディーエスエム・ゲイたちの祭典とも言えるゲイ・ナイト『ブラックパーティ』から「ブラック・ゲイ」と呼ばれることもあるらしい。ちなみに『ブラックパーティ』は長いブランクを経て2006年再開を期に、最初の開催と同じニューヨークの有名クラブ「The Saint」で催されている。

動画「RITES XXX: The Black Party」
「The Saint」でのブラックパーティの様子をおさめた広告用イメージビデオ。

(2008/02/16改訂)



『基本用語解説』

ハードゲイ:前文「ハードゲイは和製英語」参照。伝統的な男性性による、粗野(野郎系)、筋肉質、体育会系、肉体労働系、軍隊組織関係、農林業(カウボーイなど)やそれらから派生するイメージやSM、フィストファックなどハードなプレイ内容などを特にこだわりを持って好むゲイの特に日本での総称。
参考リンク:日本版ウィキペディア「ハードゲイ」

レザー・プライド(レザーマン、レザーゲイ)フラッグ:Tony DeBlase氏によってデザインされ、アメリカのハードコア・ゲイ雑誌『DRUMMER(ドラマー)』が1989年にシカゴで開催した「ミスター・レザー・コンテスト」において初めて掲げられ、発表された。
 かつて輸入されていたこの旗のステッカーに記されていた説明によると、この旗を構成するそれぞれの色は、「ブラック・レザーやブラック・ラバー(ゴム)」の黒、肉体労働者の象徴である「ブルー・ジーンズ」の群青、運動選手の競技中の下着である「サポーター(ケツ割れや運動用靴下など)」の白からシンボルカラーとしてそれぞれ採られ、赤いハートがそれぞれの色が表す分野とそれぞれを愛好する同性への愛を表すとされる。
 また、別の解釈ではハートの形と中心の白が同好のゲイたちが自分達の希望を正直に達成する純粋さを表すともされている。
 以降、同好のゲイ達や同好のゲイ団体などによってプライド・マーチや店鋪、催しなどでも掲げられるようになり、現在は小物やアクセサリーなどのデザインとしても使用されている。
 ちなみに弊サイト『KAKUREGA』もこのプライド・フラッグのシンボルカラーを参考にイメージカラーとして構成している。

ボディ・ハーネス:Body harness 1. 身体を安定させる、または器具を身体に安定させるための帯、引き具。登山、レスキュー隊、パラシュート部隊などで着用される。
2. ハードゲイ=ゲイ・レザーマン独特の革のベルトに鋲や鎖などをあしらったアイテム。X型をはじめH型など様々なバリエーションがある。プレイのさいこれを掴んで相手を自分の方へ引き寄せるなどの使い方がある。

本来は馬車馬を馬車に固定し引かせるための引き具であった。ハードゲイ=ゲイ・レザーマンのファッションやアイテムはアメリカのライダーマン(暴走族)に由来するものが多く見られる。このボディハーネスも軍隊や救助隊などの実用的なものよりも、自らを馬に見立てた発想のアクセサリーである可能性が高く。アメリカのライダーマン(暴走族)のファッションが先だったようである。

プレイ:遊び。行い。セックス〜。このサイトでは、それぞれの希望や欲求に応じて、自分あるいは相手に対して、また相手や仲間と共に行いを通して具現化することで希望や欲求を満足させ快感や楽しみを得ようとすること。として使用。

セックス・SEX:英語で性、性別、性行為のこと。ラテン語の6の数字を表す「Sex=セクス」が語源。12=1ダースとする12進法の半分であり「分かれ目」を表すことから「人間の性(別)」の意に使われるようになったとされる。

オナニー・マスターベーション・自慰行為:自分で自分に行う性行為。オナニーの語源となった「オナンの罪」とは本来「膣外射精」のこと。出生、生存率の低かった古代では、子孫繁栄の命題にそぐわないことから、子造り以外の性行為は罪悪とされた。
 近年、欧米を中心にこの「オナニー」「マスターベーション」という名称は否定的な意味合いが大きいため「ソロ・セックス」と言い換える向きもある。

フィスト(〜ファック=F.F・〜プレイ)フィスティング:かたく握られた手。拳。男女または同性同士、膣や肛門に手や拳、または腕、肘あたりまでを入れるプレイのこと。携帯共用本編「プレイと方法について-フィストファックの歴史」参照。
フィスター=フィストさせる者の意味、タチ役。フィスタチ。
フィスティー=フィストされる者の意味、ウケ役。フィスウケ。
フィスティーヌ=フィスティーの女性名詞、フィストされる女性の意味。かつてゲイ雑誌でこの名称が紹介されたが単なる言葉遊びであった可能性が高い。

SM(エスエム・〜プレイ):正式には「S&M(エスアンドエム)」加虐愛好者と被虐愛好者たちの総称。そのプレイもさす。
加虐愛好者 S=サド、サディストの頭文字で18〜19世紀初頭フランスの侯爵で作家のマルキ・ド・サドの名が語源。加虐愛好=サディズム。
被虐愛好者 M=マゾ、マゾヒストの頭文字で19世紀オーストリアの作家レオポルト・リッテル・フォン・ザッヘル-マゾッホの名が語源。被虐愛好=マゾヒズム

締め込み・褌:伝統的な日本男性の下着。特に白衣、白布は何も着ていないという意味があり、みそぎを済ませた清浄・無垢の全裸を表すため、裸参り、裸まつりなど神事においては「白締め込み」が正式となる。
 緊縛プレイでの白褌は「七五三縄(しめなわ)」に通じる縄を身体にかけることで、縛られる者は神に捧げる「贄(にえ)」に通じるため。色布、柄布の褌は邪道とされる。
六尺褌:褌に使う布の長さが日本古来の「尺貫法」という単位で6尺(約228センチメートル)の長さであることからそう呼ばれる。
越中褌:江戸時代、貴重な布を節約するため越中の藩主が考案したとされる略式の褌。

ケツ割れ・〜サポーター:1874年創業のアメリカのスポーツ・ユニフォーム、サポーターの有名メーカー『BIKE』社製造による、太腿から臀部の動きを楽にし、性器部分のみ固定するため臀部の布を取り去った下着状のスポーツサポーター『ジョック(ジョグ)ストラップ』が有名。
 ゲイ写真集やゲイビデオ等で人気モデルが着用し日本のゲイに浸透定着した。なお『BIKE』社は日本国内ではあまり知られておらず。ゲイ以外の購買層はほとんどいないらしく、ゲイショップを除いて、大手スポーツ店でもこのタイプのサポーターはまず取り扱われていない。
 また古来「ケツ割れ」は入れ墨(彫り物)などが不完全、中途半端な状態で終わっていることを示す言葉であり、「尻布が無い下着=不完全・尻の部分が割れて見える」ことに掛けた日本独自の名称である。

マラ・魔羅:男性の性器。ペニス。特に勃起した状態をさすことが多い。仏教用語、サンスクリット語で煩悩・罪悪の根源を表す「マーラ」が語源。

ディルド:特にペニスの形を模した道具で膣や肛門に挿入して快感を得て楽しむためのもの。和名=張り型。こけし。バイブ=バイブレーター機能が付いたディルドが一時期流行したため誤用された経緯のある略語。

プラグ・ストッパー(アナル〜):口木。栓。こぼれ出しを止める道具。三角すいやだ円、卵型など様々な形の、特に肛門に挿入するための栓を略してこう呼ばれる。SMプレイで浣腸を我慢させるために考案された。大きさのバリエーションがあり肛門拡張にも使われる。

ラッシュ:本来は二トライト製品の商標名。日本では2006年に規制薬物とされた違法ドラッグの一種。ヨーロッパ、アメリカなどでは『ポッパーズ』という呼称が一般的で、アメリカ合衆国のテキサス州など保守傾向の強い州などでも規制対象となっている。携帯版「「ラッシュ」と薬品誤用。」参照。

アナル(anual):ラテン語で、肛門への、肛門による、肛門的な〜、の意味。肛門=アヌス(anus)日本では医学用語として使われていたがノンケ向けSM雑誌などを通じて医療フェチ的なプレイ(お医者さんごっこ)などで使われ一般化した。発音に「あな=穴」が含まれるため日本語をもじったものと誤解されることもある。

アナルローズ:肛門の薔薇、薔薇状の肛門の意味。拡張、フィストされ腹圧によって押し出されて花びら状にびらんした肛門の有り様。
「肉牡丹=にくぼたん」:ゲイ雑誌『バディ』のコラムに登場した、アナルローズの日本的な言葉への置き換え。同誌に連載の田亀源五郎氏の『銀の華』中の台詞でも使われた。

バック(back):後ろ、後ろ向き、後退、戻るなどの意。男性ゲイの間でアナルセックスをするとき、男女間で行われる「正常位」よりも「後背位」が楽な姿勢で出来ることもあり、この体位を好む者が多かったために過去にアナルセックスを示す隠語として使われたが、今日では一般名詞のように使われている。

タチ:立ち、たち役。日本舞踊、歌舞伎などで女形(女役)と男役が踊るさい、女形が中腰や座る動きが多いのに対して、男役は立ったままの動きが多いためこう呼ばれる。ゲイのセックススタンスにこれを転じて、隠語とされた。バリタチ、フィスタチ、レズタチ、寝タチなどと使われる。もっとも、舞踊でも現実世界でもそうだが男(役)よりも女(役)の方がより能動的に動くことは珍しくない。ちなみに純粋に男役しかできないという意味で、ノンケを「純タチ」と呼ぶ向きもあったが、今日的には「ノンケ専」の用語というべきだろう。

ネコ:かつて関西方面で使われていた「おねこ」の略語。オネエ(男性ゲイの女性性を揶揄する呼び名)と同様に使われる向きが多かったが、本来あった「ウケ」という言葉がセックスの行為をあからさまに表す印象や積極性の無い印象もあるため、ネコ=猫(野生を秘めた愛玩動物)に通じるこの言葉が男性ゲイのみならず女性レズビアンにも一般化してきたものと思われる。

リバ:リバーシブル=反転させるの意味で、その略語。ゲイのセックススタンスに転じてタチ、ウケ(ネコ)が両方出来ること、その人を差す。ゲイ雑誌『バディ』誌の特集で橋本健太朗氏の文中に新語として「〜リバーシブルで楽しむ〜」と使われたのが初め。

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